<無形民俗文化財情報>

<名称>横武の百手祭り(よこたけのももてまつり)

<種別>佐賀県神埼市指定無形民俗文化財

<公開日>毎年1月の第4日曜日(2016年は1月22日,2018年は1月28日)

<時間>8:30~12:00ごろ 乙龍神社近くの作業倉庫で注連縄・的・弓矢を作る

12:00~13:00ごろ 乙龍神社で鳥居に注連縄つけ、昼食

15:00~16:30 乙龍神社で神事、その後、神社前広場で百手行事

<公開場所> 乙龍神社(佐賀県神埼市神埼町横武)

<駐車場>乙龍神社に20台程度無料駐車可能
     横武クリーク公園に20台程度無料駐車可能

<トイレ>乙龍神社に併設された横武公民館にある

<問合せ先>神埼市役所商工観光課  TEL0952-37-0107
  
 
      
 
   <横武の百手祭りの内容説明>

佐賀県神埼市内では、「横武」「下西」「犬の目」「丁太田」「鹿路」地区で形態や内容は異なるものの「百手まつり」が行われている。

「横武の百手祭り」は、神埼市神埼町横武地区の乙龍神社で毎年1月の下旬に護国豊穣・開運を祈願して行われる神事である。江戸時代に地域に疫病が流行って

たくさんの人が苦しんだ。そのため疫病退散のお願を乙龍神社で行い、病魔を的にして住民が弓矢で射たところ、願いが通じたもか急に疫病は治まった。

村人は神威に感謝し、このことを忘れないように、毎年この行事を行い、現在まで続いている。

宮中の年中行事に「御弓始」の儀式がある。一人が2本の矢を射るのを一手と言う。百手とは全部で200本の矢を的に射る。

ここ横武の百手祭は、宮中の御弓始に倣っているものの、御弓始のような厳格さはない。

地区の世帯主の男性がたちが、一人五本の矢を10mほど離れた的に射る。的は三種類ある。

その一は「大的」である。この的に当たれば大安・厄病除けの御利益ありとする。この大的の裏側の中央には、「鬼」と墨記された半紙をつける。

「鬼」の字は、甲(こう)・乙(おつ)・ム(なし)の三文字を合体させた謎字である。この文字は大的のみ着ける。

その二は、「紙的」である。竹で丸く型どりしたものに紙を貼ったもので、2mほどの竹竿に着けられる。的に当たれば家内安全の御利益ありとする。

その三は、「菱的」である。藁で菱形に編まれており、一本長い藁紐が下がっている。これも2mほどの竹竿に着けられる。的に当たれば豊作の御利益ありとする。

これらが向かって左から、大的、紙的、菱的、紙的、菱的の順に並べられる。五本の矢が与えられることから、これらの的をすべて射よということであろうが

弓矢も即席に作ったものであるので、弓が折れたりもする。弓もまっすぐではないので狙った方向には飛びはしない。

なにはさておき、大的の「鬼」が射落とされなければこの行事は終わらない。
<NIA取材記>

2012年1月22日は、どんよりとした曇り空であった。乙龍神社は何処かなと探してみたがなかなか見つからない。こうなりゃ誰かに聞くしかないなと

車を路肩に停めて歩いていたら、軽トラに荷物を積んで出かけている男性に出会った。神社の場所を訊ねると「軽トラについて来い」という。

着いたところは神社ではなく倉庫であった。午前中はここで百手祭の準備をするそうだ。午前8時から竹を切ってきて弓矢を作ったり、

藁を打ってしめ縄や菱的を作ったりと、30人ほどの男達が役割を分担して作業をしていた。

この地方の注連縄は、今まで私が見てきたものとだいぶん違っている。左右対称なのだ。佐賀県はみんながそうかは今後の調査で明らかになるだろうが、

首都圏や福岡県では元が太くて先が細い形である。私も注連縄を数十個ほど編んだ事があるが、藁自体も元が太くて先が細いので必然的にこうなるのだ。

しかし、この地方のは違うのである。昼ごろ、この倉庫から150mほど離れた乙龍神社へ作ったものを担いで運ぶ。

神社と言っても小さな鳥居があるだけで乙龍神社と横武公民館が合体した構造になっている。これでは神社を探すのは大変だ。

昼食をこの横武公民館でとった後、男たちは自宅へ帰る。午後3時の神事が始まるまでしばし休憩となる。

神殿には、このクリークで獲れた大きな真ブナが雌雄一対、腹合わせで吊下げてある。また、大根を1cmほどの厚さに輪切りにして

並べられたもの、もち米や塩を皿に盛ったものなどが神前に供えられている。横には的や弓矢もある。やがて神事が始まる・・・・・・・・・。

神事が終わると全員が外に出て行事の準備に入る。先ず的を準備する。毎年の事なので、5本の的の位置にはパイプが埋設してあり、すぐに取り付けが完了した。

参加者は的から10mほど離れた位置に横並びになって5つの的に弓を射る。地区の人々だけではなく参観者も弓を射ることは可能で、

私も、すすめもあって5本の矢を射ることになった。矢竹がまっすぐではないので、狙った所には飛んでいかない。

「初めての人は、なかなか当たらないよ」との言葉に励まされ、4本目の矢が見事「紙的」を射通した。

「あんたは今年はいいことがあるばい」との声に気を良くしたものであった。

2回目の取材を2018年1月28日に行った。2012年の初回取材から6年も経つが、保存会の皆様の、なに一つ変わらない伝承の意気込みに敬意を表します。

                                                                                                                                               記述 2012.1 2018.1 池松卓成